自分の「好き」、開拓中。 【不染鉄@奈良県立美術館】
こんばんは、美和です。
また、好きな画家がひとり増えました(*´ω`*)♪
その名も「不染鉄」。
んんん?聞いたことない。
ですよね。わたしも知りませんでした。
なんてったって名前
不染鉄(ふせんてつ)。いいですねぇ。名前がいい。ただただ名前に惹かれて、2ヵ月も前からこの展覧会に行くことを決めていました(笑) 不染が苗字で、鉄が名前だそうで。
不染鉄(1891~1976)は、東京・伊豆大島・京都・奈良を転々とした日本画家。経歴が不明なところが多く、幻の画家といわれています。
さて、幻の画家が描く幻の世界を少し旅してみましょう(*´ω`*)ノ
ノスタルジー
例えばこの絵。
茅葺屋根の家並を描いてます。が、じぃーっと見てるとなんかメルヘンチックな感じ。家や木立の緻密な筆づかい、全体がセピア色にかすみがかっているからでしょうか。
この作品は、不染鉄が昔住んでいた土地を思い出して描いたそうです。通奏低音のように流れる郷愁(ノスタルジー)が、茅葺の家をおとぎの国に見せるのかもしれません。
描かれているのはただの家なのに、その中に住んでいる人の気配・あたたかみまで描けるのが不染鉄の魅力。
ありえない構図
不染鉄の代表作「山海図絵」。
真ん中にそびえるのは、もちろん富士山。麓に広がる村や漁港はすっごく緻密。その緻密さが、実際の風景をそのままに写し取ったように思わせます。でも、これは、俯瞰(マクロの視点)と接近(ミクロの視点)が入り混じったもの。不染鉄は、実際の地理などは気にせずに描くのが好きだったようです。むしろ、そういう事にとらわれるのが嫌いだったそう。
おもしろいのが、絵の一番下には、海の深くにいるはずの魚の群れが描かれています。普通は海の表面を描くところを、不染鉄は深い海の底を表現しました。
いろんな意味でありえないこの絵は、不染鉄にしか描けない。
こんな絵も
不染鉄は、なんでもない風景に情緒をのせて描くのが魅力です。しかし、無機質な家が描かれている作品がひとつだけあります。
それが「廃船」。
ものすごく寂しい絵。よくみると、火事がおきてる家もあるのに、まったく人の気配がしません。この作品は、戦争に対する怒りをこめて描かれたそうです。
不染鉄の異色作。
おいたち
不染鉄の作品の特長は、やはり、不染鉄その人の人生とリンクしてくるように思われます。
不染鉄は、僧侶の父と由緒ある家柄の未亡人の女性との間に生まれました。しかし、僧侶である父は妻帯を許されておらず、母も身上を隠しての関係だったことから、父が住職を勤めるお寺で育てられました。
その父母も早くに亡くし、画家として生きていくことを決めた不染鉄は、孤独と貧しさから逃れるため、伊豆大島に行きます。その近くの村で半分漁師のような生活(!)をしながら絵を描いていました。すごく村の人たちと仲良くなったそうです。
漁師のような生活を経て、今度は京都で絵画の専門学校に通います。10数年後、奈良へ。その後、関東へ戻り、また晩年には奈良で穏やかに絵と向き合う生活を送りました。
不染鉄は、伊豆の漁村や京都・奈良の思い出の風景を何度も描いています。
郷愁と、出生の複雑さから垣間見える孤独。
不染鉄の、あたたかみのある絵は、孤独の裏返しだったのではないでしょうか。
最後に、お気に入りの一枚
わたしが展覧会で一番気に入ったのがこれ。
不染鉄は、絵と文章を一緒にした作品もたくさん残しています。これがまためちゃくちゃいい味だしてるんですねぇ。不染鉄の書く字がゆるくてかわいい。古くなった自転車に、72歳になった自分自身を重ね合わせて「仲良くしようよ」って語りかけるなんて…(´・ω・`) きっとこの人、ピュアで寂しがりやだったんじゃないかな~て思いました。
今回の旅はこれでおわり。
しばらく風邪ひいてたのもあって、久しぶりの投稿になりました…
こんな固い文章で書いたら、誰も読んでくれないよなぁ(´-ω-`)とブツブツ反省しつつ筆をおきます(いや、キーボードですけど)。
いつも読んでくださってありがとうございます(*'ω'*)♡みなさんのブログも読んでますよ(*´▽`*)ノ☆☆
おしまい